注1:参考資料

1. IPCC 第1ワーキンググループ第3次報告書「政策決定者のための概要」抜粋

1-1. CO2以外の温室効果ガスの濃度が2100年までにどのくらい変化するかについてのモデル計算の結果はSRESシナリオの代表例として用いたシナリオ毎に大きく異なり、2000年での値を基準とした場合、CH4の変化量は-190〜+1970 ppb(現在の濃度は1760 ppb)、N2Oは+38〜+144 ppb(現在の濃度は316 ppb)、対流圏のオゾンの総量は-12〜+62 %であり、ハイドロフルオロカーボン類(HCFC)、パーフルオロカーボン類(PFCs)及び六フッカ硫黄(SF6)の濃度については、非常に広い幅で予測されている。シナリオによっては対流圏オゾン総量がCH4と同程度の放射強制力を持つとの結果が出ており、北半球の大半の地域では、大気の質の目標達成 *が脅かされかねない。

1-2.対流圏オゾンの総量は1750年以降36%増加したと見積もられている。これは、いくつかのオゾン生成ガス** の人為起源による排出が主であり、放射強制力にして0.35 Wm-2に相当する。オゾンの放射強制力は地域によって大きく変わり、CO2のような長寿命の温室効果ガスと比べて排出量の変化にすばやく***応答する。

2.語句の説明
2-1.放射強制力
地球の熱収支の平衡状態からのずれを対流圏界面における単位面積当たりの放射量(W m-2)で表したもの。その要因としては、太陽入射量、大気中の温室効果ガス濃度、雲量などがあり、放射強制力という概念を用いることによってこれらを気候変動の要因として量的に比較することが出来る。なお、ここでは温室効果の度合いを表す尺度として用いられている。

2-2. SRES
Special Report on Emission Scenarios 排出シナリオに関する特別報告

3. 成層圏オゾンと対流圏オゾン
地球大気のオゾンの約90%は成層圏に存在し、対流圏には残りの約10%が存在する。従って成層圏オゾンが例えば10%減少したとき、それによる地表での紫外線の増加を防ぐために対流圏オゾンの増加で補おうとすると対流圏オゾンはほぼ100%(2倍)増加しなければならない。対流圏オゾンが2倍も増加するとそれによる植物被害、健康影響、温室効果などが深刻化するので、対流圏オゾンの増加で成層圏オゾン減少を補おうと考えるのは非現実的である。対流圏オゾンの増加による環境影響は、今後益々重要になるものと考えられている。


*日本では1時間平均値で60ppb
**オゾンは窒素酸化物、炭化水素、一酸化炭素から大気中の光化学反応で生成される。
***オゾンの大気中寿命は夏季には1-2週間、冬季には1-2ヶ月である。